【アスリート、スポーツ栄養士必見】栄養サポートで目標設定の具体的な方法
スポーツ栄養に特化したしつもん箱「食べカツ」の番外編です。メルマガ読者さまからの質問を掲載しています。今回は初めて個人選手をにサポートすることになった管理栄養士から質問を受けました!
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初めて個人選手をサポートするときの目標のたてかた!
南部さん!初めて個人選手をサポートすることになりました。しかし、初めてのことで栄養サポートをするときの目標の立て方がわかりません。具体的には何を目標にしていけばよいでしょうか?
弟子のフッシー
南部です。ご質問ありがとうございます!この子は以前、ぼくのところにインターンにきていた子ですね!徳島から上京して頑張ってるみたいです!
それにしても、就職してからすぐに選手サポートまですることになっているとは!驚きです!
まずは、目標を立てることが大切だということもわかっているのはさすがですね!管理栄養士の人だけじゃなくて、選手の皆さんもこれは大事なんでしっかりと記憶しておいてくださいね!
さて早速。悩みに対する返答をしていきます。
スポーツ栄養のしつもん箱 食べカツとしての回答
初めてのことで栄養サポートをするときの目標の立て方がわかりません。具体的には何を目標にしていけばよいでしょうか?
「スポーツ栄養のサポートの時に目標設定が大事!」
この質問ができることはすごいことです!目標などを考えず、適当にやっちゃう人も多いので…
特に感覚重視のアスリートやトレーナーに多いかな?
では、目標設定の際にどんなことが大事なのかをお伝えしていきます。
評価、目標設定、サポート計画、再評価
基本的にはこのような流れになります。
1、まずは現状を知る(評価:アセスメント)
まずは、今の現状を知ることが重要になります。
具体的な項目としては
身長、体重、体脂肪率
競技歴、故障歴、練習時間、練習の頻度、睡眠時間
食事の状況(食事調査)
カロリー、ビタミン、ミネラル などのバランス
栄養士はもちろん、選手自身もこういったものを知る必要があります。
身長や体重などは聞き取りである程度把握することが可能です。
しかし、食事の状況は実際に詳しく調査してみないとわからないことが多いです。選手自身はたくさん食べているつもりでも、実はカロリー不足を起こしている可能性は大いにあります。
評価項目はたくさんあった方が予測を立てやすいですが、選手の負担などを考えて組み立てていかなければいけません。
また、変化を知るためにも数値で測れる項目は必須です。(体重など)
2、個人における目標設定
評価項目で現状を知ったら、個人としてのどこを目標にするのかを決めていきます。
大きく分けると3つあります。
⑴ リスクマネジメント(回復)
貧血予防、疲労骨折からの回復、故障からの復帰
怪我や体調不良に対してケアしていくものです。怪我などの症状が出てからでは遅いのですが、不調から回復するには食事の力が必要となります。
目標の例
貧血改善、疲労骨折からの回復、など
⑵ 運動量が増加した状態での健康維持と疾病予防(予防)
自己管理能力、熱中症の予防、コンディショニングの維持
ポイントは一般の人以上に運動量が多いことを意識した上での自己管理能力の獲得です。スポーツをすると言うことは何もしない状態よりもリスクが大きい状態です。食事の量は当然多くなります。運動を全くしない一般人の健康管理とは一線をかくすることを記憶しておくとよいでしょう。
目標の例
3食の食事 + 補食を摂る、熱中症にならないようにする、疲労を溜めない生活リズムを作る、など
⑶ 体力、競技力向上(健康増進を含む)
ウェイトアップ or ダウン、試合期のマネジメント、トレーニング量増加に伴う管理
競技力向上!アスリートにとってはここが一番馴染み深いでしょう。筋力アップやスタミナアップを目指す状態です。また、試合の時にどのように食べていくの?これは上記に説明した2つができたうえでの話になってきます。ここだけを特化させようと思い、生活リズムを無視しているとコンディショニングの維持は遠ざかってしまうかもしれません。
目標の例
筋肉量を2kg増やす、体脂肪率を5%落とす、試合でスタミナが切れない食事をする など
3、個人目標に対しての栄養サポート計画を立てる
ここまできて、やっと栄養士としのて見せ所となります。選手の目標に対してどのような栄養サポートを組み合わせていくのか? ここはガイドラインと言うよりも、選手個人個人に合わせていく形になります。
例えば、高校男子バスケットボール選手の目標として「バスケの試合に勝つために筋力(主に下半身)をつけるために筋肉量を2kg増やす、指標としてはスクワット100kgをあげる力を持つ」としましょう。
そこで選手の身長体重などから、目標とする体重増加が適切なのか? なども考える必要があります。 競技によって適正とされる体重などは違うと思うのでそこは各自で調べてみてくださいね。
彼の場合、バスケでは体重制限がないので、満足に動けるのであれば体重は比較てきに重くても大丈夫です。体重として2kg増えても問題ないと考えます。
筋肉量2kgを増やすのであれば、最低でも筋肥大のための週3日程度のウェイトトレーニング + 食事も筋トレをした日には特にいつもの食事に+500〜1000 kcalの食事量が必要になってきます。
では、どう言う風に栄養サポートの計画を立てるのか??
この場合は食事調査と練習量の調査が必須と言ってもよいでしょう。最近の体重の変動はどうなのか? 減っているのであれば、練習量に見合った食事量が摂れていないことが予想されます。毎日バスケの練習があるのでまずは、練習量に見合う食事量を確保することをはじめの目標にする必要があります。
体重減少が止まれば、増量のための食事量を確保していく必要があります。ここまで来るのに何ヶ月かけるか? を計画していきます。
ここで当初の目標、「筋肉量を2kgあげるのはどこにいったんだ?」 と思うかもしれません。体重が現時点で減っていないのであれば、筋肉量を増やすための食事を提示してもよいかもしれません。しかし、現時点で体重が減っているのであれば、そこを止めることが優先されます。
筋肉量だけに注目してしまうと、「プロテインを使ってタンパク質をとっておけばよいだろう!」というような素人考えになってしまう可能性があります。
まさに木を見て森を見ず。(一つのことに気を取られて全体を見れていない状態)
結論、この選手に必要な栄養サポートは「練習量に見合った食事量を確保する。」
まだまだ、続きます。これでは終わりません!
目標が決まれば、次は行動計画に落としていきます。
食事量を確保するためにどうすればよいのか? ここで選手ができることをアレコレと提示していきます。
例えば、1日の食事量(摂取サロリー)が運動量と比べて −500kcalだったとしましょう。
この場合は、1日に500kcal追加することを考えていきます。
ここでは、何を、いつ食べるのか? を行動計画にうつしていかないといけません。ここでも食事調査が生きてきます。
栄養バランス(タンパク質、脂質、炭水化物)のバランスが悪く脂質が多すぎている場合だと、「ごはん」(炭水化物が多い)を中心に考えていくのがよいでしょう。
ごはんだけで500kcal追加するには300gほどのごはん(炊飯後のメシ)を食べる必要があります。おにぎりだと3〜4個分。
これだけの量を朝? 昼? 夜? はたまた補食で摂るのか?
これを選手の生活リズムに合わせて設計していきます。時間的に厳しい状況で朝ごはんに大量に食べさせるなどはナンセンスです。
栄養サポートの行動計画ができると実践あるのみ!
選手として、いつ、どこで、何を、どうするのか? が設定できると、あとは実践してもらうのみです。
しかし、計画を立てたとしても全部がうまくできるとは限りません。
だからこそ、経過観察をしながら選手と話し合って目標が正しかったどうかを検討していく必要があります。
これには期間を決めておいて「できたのか?」「できなかったのか?」を見なければなりません。
4、期間を決めて再度評価する。(再アセスメント)
行動計画を実行した結果、どうなったのかを調べる必要があります。
これは最初にやった現状を知るための同じ項目をチェックしてみてください。ここで栄養士の本当の価値が評価されると言ってもよいでしょう。食事に力を入れた結果、選手に対してどんなメリットがあったのか?
例、体重、スクワットの重量、行動計画の是非 など
期間の例としては1ヶ月や3ヶ月と言ったところです。クリアできたこと、できなかったことなどを踏まえて、次の期間に進んでいきます。
栄養サポート目標設定まとめ
初めての栄養サポートを行うスポーツ栄養士のフッシーさんの質問に対して、
- 現状把握、個人目標、栄養サポート計画、再評価のながれ
- 特に詳しくは個人目標に沿った栄養サポート計画の立て方
こんなことを説明してきました。初めて栄養サポートを行う栄養士はもちろんですが、アスリート自身もこのように目標設定、行動計画をつくっていくことを知っておいて損はありません。あくまで栄養サポート計画ですが、トレーニングにしても同じようなことが言えます。
参考文献:鈴木 志保子著 日本医療企画 健康づくりと競技力向上のためのスポーツ栄養マネジメント
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